アパレルブランドにとって、モデルは単に服を着る存在ではありません。
ブランドの「顔」として、その世界観やメッセージを顧客に届け、時には売上を大きく左右するほどの力を持つ重要なパートナーです。
しかし、
「自社ブランドに本当に合うモデルってどうやって探せばいいの?」
「モデル選びで失敗したくない…」
と悩む担当者様も多いのではないでしょうか。
この記事では、現役モデルが監修する「MODEL Bookmark 編集部」が、ブランドの価値を最大限に高めるためのモデル選びの全知識を、具体的かつ分かりやすく解説します。
コンセプトの整理から、具体的な選定ポイント、依頼先の比較、そしてモデルとの良好な関係構築まで。
この記事を読めば、もうモデル選びで迷うことはありません。
Contents
なぜ今、モデル選びがブランドの未来を左右するのか?
ブランドの「顔」としてのモデルの役割
モデルは、服を魅力的に見せるだけでなく、ブランドが持つストーリーや価値観を体現する「語り部」です。
顧客はモデルを通して商品を自分ごと化し、「この服を着たら、こんな素敵な自分になれるかも」とブランドへの共感や憧れを抱きます。
良いモデルとの出会いは、ブランドに血を通わせ、顧客の心に響く物語を紡ぎ始めます。
SNS時代におけるモデルの影響力
InstagramなどのSNSが普及した現代において、モデル個人の発信力がブランドの認知度向上に直接貢献するケースが増えています。
モデルが自身のSNSで撮影の裏側や商品への想いを投稿することで、そのフォロワーに情報が届き、新たな顧客層への強力なアプローチとなります。
- 信頼性の向上 → モデル自身の言葉で語られることで、広告感が薄れ、よりリアルな口コミとして信頼されやすくなります。
- 新たなファン層の獲得 → モデルのファンが、ブランドの新たなファンになる可能性があります。
- エンゲージメントの創出 → コメントや「いいね!」を通じて、顧客と直接的なコミュニケーションが生まれます。
モデルの影響力は、もはや撮影現場の中だけにとどまらないのです。
【5ステップで解説】失敗しないモデル選びの具体的な進め方
モデル選びを感覚だけで進めてしまうのは失敗のもとです。
論理的なステップを踏むことで、自社に最適なパートナーを見つけ出す確率が格段に上がります。
STEP1:ブランドコンセプトを「言葉」にする
最初の、そして最も重要なステップです。
「どんなイメージ?」「ターゲットは誰?」といった漠然としたイメージを、チーム全員が共有できる具体的な言葉に落とし込みましょう。
「上品」「カジュアル」といった単語だけでなく、より解像度を上げたペルソナを設計することが重要です。
【ペルソナ設定の例】
- NG例:20代女性、カジュアル
- OK例:都心で働く28歳女性。平日はオフィスカジュアルだが、休日は美術館巡りやカフェで過ごすのが好き。シンプルで質の良いものを長く使いたいと考えている。知的で、少しだけ遊び心のあるスタイルを好む。
このようにペルソナを明確にすることで、モデルに求めるイメージがブレなくなります。
STEP2:候補者を探す(依頼先の選定)
コンセプトが固まったら、いよいよ候補者探しです。
依頼先は主に4つあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
依頼先 | メリット | デメリット |
---|---|---|
モデル事務所 | ・品質、信頼性が高い ・契約周りがスムーズ | ・費用が高め |
キャスティング会社 | ・探す手間が省ける ・幅広い提案力 | ・仲介手数料がかかる |
マッチングサイト | ・低コストで探せる ・多様な人材がいる | ・品質にばらつきがある ・自己責任の部分が大きい |
SNSで直接交渉 | ・コストを抑えられる ・世界観が分かりやすい | ・交渉や管理が大変 ・トラブルのリスク |
ブランドの規模や予算、求めるレベルに応じて最適な方法を選びましょう。
STEP3:書類選考(ブック・コンポジット)の見極め方
候補者がある程度絞れたら、プロフィール資料である「ブック(ポートフォリオ)」や「コンポジット(宣材写真)」で書類選考を行います。
ただ写真の雰囲気を見るだけでなく、以下の点をチェックしましょう。
- 表現の幅 → 笑顔、クールな表情、ナチュラルな雰囲気など、様々な表現ができるか。
- ポージングの安定感 → 手足の先まで意識された、美しいポージングができているか。
- 過去の実績 → 自社ブランドとテイストが近い仕事の経験があるか。
- 情報の更新頻度 → 最近の活動状況が分かる、新しい写真が含まれているか。
これらの資料は、モデルがこれまで積み上げてきた実力の証明書です。
STEP4:オーディション・面談で確認すべきこと
写真だけでは分からない「人柄」や「プロ意識」を見極める重要なステップです。
スキルチェックはもちろんですが、ブランドへの理解度やコミュニケーション能力を重点的に確認しましょう。
【オーディションでの質問リスト例】
- 私たちのブランドにどんなイメージを持っていますか?
- 今日の服装で意識したポイントはありますか?
- 撮影現場で、一番大切にしていることは何ですか?
- (商品を見せながら)この服なら、どんな風に動いて表現しますか?
短い時間でも、こうした対話を通じて、一緒に良い作品を作れるパートナーかどうかが見えてきます。
STEP5:契約内容の最終確認
最後に、契約です。
ここで曖昧な点を残すと、後々大きなトラブルになりかねません。
特に以下の項目は、必ず書面で明確に取り決めましょう。
- ギャランティ(報酬):金額、支払いサイトなど。
- 拘束時間:何時から何時までか、延長の際の条件はどうか。
- 肖像権の利用範囲:どの媒体(Web、SNS、店舗POPなど)で、どのくらいの期間(半年、1年など)使用するのか。
- 競合の有無:契約期間中、競合他社の広告に出演しないという約束(競業避止義務)。
お互いが気持ちよく仕事をするための、大切なルール作りです。
【項目別】ブランドに合うモデルを見極める7つの重要ポイント
1. ブランドコンセプトとの親和性
最も重要なポイントです。
モデルが持つ雰囲気や個性が、ブランドの世界観とぴったり合っているかを見極めます。
服が素敵に見えるのはもちろん、「この人が着ているから、このブランドは素敵なんだ」と顧客に感じさせることが理想です。
2. ターゲット層への訴求力
ブランドが狙う顧客層が、そのモデルを見て「共感」や「憧れ」を抱けるか、という視点も欠かせません。
ターゲットに近い年齢やライフスタイルのモデルを起用することで、顧客は商品をより「自分ごと」として捉えやすくなります。
3. 表現力とポージングスキル
服のデザインや素材の良さを、写真や動画で最大限に引き出すのがプロのモデルです。
カメラマンの指示を的確に体現する能力はもちろん、時には自らポージングを提案し、作品のクオリティを一緒に高めてくれるようなモデルは、非常に心強い存在です。
4. プロ意識とコミュニケーション能力
これは見落とされがちですが、非常に重要です。
- 時間やルールを守る
- 常にベストな状態で現場に来るための体調管理
- カメラマンやヘアメイクと円滑に意思疎通できる

こうした基本的なプロ意識とコミュニケーション能力が、現場の雰囲気を良くし、結果的に作品の質を大きく向上させます。
5. SNSでの影響力とセルフブランディング
フォロワー数という数字だけでなく、その「質」に注目しましょう。
普段の投稿内容や、フォロワーとのやり取りから見える人柄や価値観が、自社ブランドのイメージを損なうものでないか、事前に確認することが大切です。
6. 身体のサイズとバランス
特にECサイトでは、着用感がリアルに伝わることが売上に直結します。
ブランドが展開する商品のサイズと、モデルの体型が合っているかは、基本的ながらも必須の確認項目です。
全身のバランスが取れたスタイルの良さも、服を美しく見せる上で重要になります。
7.【モデルの本音】モデル側が「また仕事したい」と思うブランドとは?
最後に、「MODEL Bookmark 編集部」ならではの視点をお伝えします。
モデルも一人の人間であり、パートナーです。
良好な関係を築くことが、モデルのパフォーマンスを最大限に引き出す秘訣です。
モデルが嬉しくなるブランド側の配慮
「今日の撮影で使ったお洋服、とても素敵でした!」
「〇〇さんのおかげで、最高の写真が撮れました。ありがとうございます!」このような感謝の言葉や、ブランドへの理解を深めるための事前の資料共有、働きやすい現場環境への配慮は、モデルのモチベーションを大きく高めます。
「このブランドのために、もっと頑張ろう」と思ってもらうことが、最高のクリエイティブに繋がるのです。
よくある質問(FAQ)
Q: モデルのギャラ(料金)の相場はどれくらいですか?
A: ギャラはモデルの知名度や実績、依頼内容(スチール、動画など)、拘束時間、肖像権の利用範囲によって大きく変動します。
フリーランスモデルは1日数万円から、人気モデルや事務所所属モデルは数十万円以上になることもあります。
まずは予算を決め、キャスティング会社や事務所に相談するのが確実です。
Q: フリーランスモデルと事務所所属モデル、どちらに依頼すべきですか?
A: 費用を抑えたい、柔軟な交渉をしたい場合はフリーランスが選択肢になりますが、品質のばらつきや契約・進行管理の手間というデメリットもあります。
一方、事務所所属モデルは費用が高めですが、スキルや信頼性が担保されており、トラブル時の対応も安心です。
ブランドの状況や求めるレベルに応じて選びましょう。
Q: 競合ブランドと同じモデルを起用するのは避けるべきですか?
A: ブランドイメージの混同を避けるため、特に主要な競合ブランドで起用されているモデルは避けるのが一般的です。
契約時に「競合排除」の条項を入れることで、一定期間、競合他社の広告に出演しないように取り決めることが可能です。
Q: 新人モデルを起用するメリット・デメリットは?
A: メリットは、ギャラを抑えられること、フレッシュなイメージを与えられることです。
デメリットは、経験不足による表現力の限界や、撮影に時間がかかる可能性がある点です。
育成する視点を持ち、ディレクションを丁寧に行う必要があります。
Q: 契約書で特に注意すべき点は何ですか?
A: 「肖像権の利用範囲と期間」を最も注意深く確認してください。
Webサイトのみの契約なのに、無断でSNSや印刷物に使うと契約違反になります。
二次利用の可能性がある場合は、事前にその条件も含めて契約を結ぶことが重要です。
まとめ
ブランドイメージを左右するモデル選びは、単なる作業ではなく、未来への「投資」です。
ブランドのコンセプトを深く理解し、ターゲットの心に響くモデルをパートナーとして迎えることで、商品の魅力は最大限に引き出され、ブランドの価値は着実に高まっていきます。
本記事で紹介した内容を、ぜひあなたのブランドにとって最高のモデルを見つけるためにご活用ください。
- 失敗しないための5ステップ
- 見極めるための7つの重要ポイント
この出会いが、あなたのブランドを新たなステージへと導くきっかけになることを心から願っています。
まずは、自社のブランドコンセプトを、もう一度チームで言葉にしてみることから始めてみましょう。
この「ブランド体験」の質こそが、目先の売上だけでなく、顧客との長期的な関係構築に繋がるのです。