食品・飲料の広告にモデルを起用するメリットと、シズル感を出す撮影テクニック

食品や飲料の広告を見るとき、あなたはまずどこに目がいきますか?

商品そのものの魅力、湯気の立ち上る様子、みずみずしい質感——それら“おいしそう”を演出する要素、いわゆる「シズル感」は、たしかに広告の主役です。

けれど、そこに人が映っているだけで、その商品の印象がガラリと変わるのを感じたことはないでしょうか?

実は、視線の動きや購買意欲に影響を与える“人の存在”は、食品広告においても極めて重要なファクターとされています。

特に近年、広告に登場するモデルが「おいしそうに食べている」「楽しそうに飲んでいる」といったリアクションを見せることで、視覚だけでなく感情の連鎖を生み出し、購買行動に結びつけることが可能になってきました。

つまり、モデルは商品の「補足情報」ではなく、商品の価値を立体的に伝えるストーリーテラーとして活躍できる存在なのです。

本記事では、現役モデルの監修と広告撮影現場の知見をもとに、

  • なぜ食品・飲料広告にモデルが効果的なのか?
  • どのようにモデルを起用すればブランド価値が高まるのか?
  • “シズル感”を最大化するための撮影テクニックは何か?

といった視点から、企業のマーケティング担当者にも、モデルを目指す方にも役立つノウハウを、実例や裏技を交えて詳しく解説していきます。

「写真1枚で、商品の魅力を伝えきる」

そんな強いビジュアルを生み出すために、モデルとシズルがどう絡み合うのか——広告クリエイティブの可能性を、一緒に探っていきましょう。

Contents

食品・飲料広告におけるモデル起用の重要性

モデルが生む信頼感とストーリーテリング

広告は「伝える」だけではなく、「感じさせる」ことが求められる時代になっています。

その中で、人の表情やしぐさは、言葉を超えて見る人の心に訴えかける力を持っています。

とくに食品や飲料の広告においては、「おいしそうに食べている」「笑顔で飲んでいる」という自然なリアクションが、商品のストーリーを完成させる重要な要素になります。

モデルを起用することで、以下のような視覚的効果が期待できます。

  • 表情による感情伝達:幸福感・満足感などを視覚で伝える
  • 動作が物語を生む:食べる・飲む所作がそのシーンを立体的に演出
  • ブランドへの信頼感:人が関わることで企業の「顔」が見えるようになる

「人の顔を含む広告は、注視率が30%以上高い」
──広告心理学研究(日本心理学会)

モデルが広告に登場することで、単なる商品説明ではなく、ブランドの世界観を“空気ごと”伝える演出が可能になります。

こうしたストーリーテリングは、視聴者にとって共感しやすく、ブランドへの親近感を育てる重要な役割を果たします。

購買意欲を刺激する心理的トリガー

なぜ「モデルがいる広告」のほうが心を惹きつけるのでしょうか?

それは、人間の深層心理に働きかける「心理トリガー」が作用しているからです。

以下は、広告における代表的な心理トリガーです。

1. 同一化(アイデンティフィケーション)
「この人みたいになりたい」と思わせる感情移入。

2. 欲望転移(ディレイド・トランスファー)
モデルが楽しそうにしている=自分もそうなりたい、と購買動機に直結。

3. 社会的証明
他人が使っているものには価値があると感じる心理(バンドワゴン効果)。

たとえば、若年層向けの炭酸飲料の広告で、笑顔の若手モデルが友人と盛り上がっているシーンを見ると、「私も飲みたくなる」という気持ちが自然に湧いてきませんか?

これは単なる演出ではなく、消費者心理を戦略的に捉えた演出設計なのです。

とくにSNS全盛の現在では、写真や動画が流し見される中で、一瞬で「欲しい」と思わせる演出が必要不可欠。

モデルの存在は、その“決定的瞬間”を作り出す装置とも言えるでしょう。

モデルを起用する5つのメリット

食品や飲料の広告制作において、「モデルを起用すべきかどうか」は悩みどころの一つです。

しかし実際には、モデルの存在があるだけで広告の“伝達力”が飛躍的に高まるケースが多く見られます。

ここでは、モデル起用によって得られる具体的な5つのメリットをご紹介します。

メリット1:ブランドイメージの明確化

広告に登場するモデルは、ブランドの“顔”になります。

たとえば、爽やかで健康的な印象を与えるモデルを起用すれば、そのまま商品にも「フレッシュでクリーン」なイメージが加わります。

特に食品や飲料は「味」「成分」だけでは差別化が難しいため、モデルを通じた印象形成が強力な武器になります。

「人物がブランドの記号となり、広告が“記憶に残る”理由になる」
──マーケティング専門誌『販促会議』

✔ ブランドイメージを強化するためのポイント:

  • 商品コンセプトと一致するモデルを選ぶ
  • 衣装やメイク、背景にもブランドらしさを反映
  • モデルの表情や演技で感情的価値を訴求

メリット2:ターゲットへのリーチ拡大

モデルは単なる「広告の一要素」ではありません。

特にSNSのフォロワーを持つインフルエンサーモデルを起用すれば、その影響力が広告の“拡散装置”となります。

以下のような波及効果が期待できます。

  • SNSシェアによるオーガニック拡散
  • モデルのフォロワーからの信頼感と反応
  • モデル自身によるUGC(ユーザー生成コンテンツ)
起用モデルの種類主な効果注意点
専属モデル一貫したブランド表現契約コストが高い場合も
SNSインフルエンサーリーチ数・拡散性が高いブランド管理の徹底が必要
新人・ナチュラル系モデル共感力と親近感表現力に差が出やすい

特に若年層がターゲットの商品では、「誰が広告に出ているか」が購買意欲に直結する傾向があります。

メリット3:広告の差別化と記憶定着

競合商品の多い市場では、商品の特性だけで差別化を図るのは至難の業です。

そこで効果を発揮するのが、“人”を取り入れた広告構成です。

モデルを通じて生まれる以下の要素が、広告の差別化につながります。

  • 表情や動作によるオリジナリティ
  • 「あの人が出ていた広告」として記憶されやすい
  • ブランドの世界観に個性が宿る

たとえば、同じコーヒー飲料でも、落ち着いた大人の女性モデルを起用するか、活発な若者グループを起用するかで、まったく異なる印象を与えることができます。

これは、視覚によるブランドパーソナリティの演出とも言える手法です。

メリット4:多文化・多様性対応

いま、広告業界では「多様性(ダイバーシティ)」がキーワードとなっています。

食品や飲料という生活に密接したジャンルにおいては、特にその傾向が強く、国籍・年齢・性別・体型など、多様なバックグラウンドを持つモデルの起用が歓迎されるようになっています。

このアプローチには、次のような利点があります。

  • 社会的価値の訴求:企業の姿勢として好感度が上がる
  • 共感の広がり:より多くの生活者に“自分ごと”として受け入れられる
  • グローバル展開対応:海外市場も視野に入れた広告設計が可能

たとえば国内の大手飲料メーカーでは、アジア系・欧米系・ミドルエイジモデルを起用したキャンペーンで、多国籍層からのSNS反応率が約1.5倍に上昇したという実績もあります。

食品×モデル=多様性の象徴
美味しさは、どんな人にも届く——そんなメッセージを、視覚と言葉を超えて伝えるのが多文化キャスティングの力なのです。

メリット5:二次利用による費用対効果

広告制作には予算がつきものです。

モデルを起用する場合も、その費用をどう正当化するかは企業にとって重要なポイント。

ですが実は、モデルの出演素材は“マルチユース”できるという大きな利点があります。

一度の撮影で以下のような多用途展開が可能です。

  • TVCM用動画素材
  • SNS用ショート動画(リール・ストーリー)
  • 商品パッケージ用の静止画
  • Webサイト・オンラインショップのトップビジュアル
  • 店頭POPやカタログ素材

これにより、制作費に対するリターン、つまりROI(投資対効果)を最大化することが可能になります。

媒体モデル素材の活用例必要な契約項目
TVCMメイン出演放映期間・地域の明記
SNSストーリー・投稿写真投稿本数・再投稿可否
Webサイトヒーロー画像・バナー掲載期間・二次使用料

計画的な活用と、契約面での適切な管理を行えば、「高コストに見えるモデル起用」も、実は賢い投資となるのです。

モデル選定とキャスティングのポイント

モデルを起用するにあたり、最も重要なのは「誰を選ぶか」です。

商品の魅力を最大限に伝えるためには、商品コンセプトやターゲット層とモデルの個性が合致していなければなりません。

次のセクションでは、モデル選定で押さえるべきポイントや、撮影現場での表現力について詳しく解説していきます。

商品コンセプトとターゲットのマッチング

広告におけるモデル選定は、“見た目”だけで決めるものではありません。

むしろ重要なのは、商品が持つメッセージやブランドパーソナリティと、モデルが放つ雰囲気や価値観が一致しているかどうかです。

そのためにまず行うべきは、ターゲット層の明確化と、商品コンセプトの言語化です。

以下のような分析と準備が求められます。

ペルソナ分析のポイント

  • 年齢・性別・ライフスタイル・嗜好などを具体化
  • 商品の「理想的な愛用者像」を明確にする
  • SNSなどの声を参考に“リアルな感情”を拾う

クリエイティブブリーフ作成のコツ

  • 商品の強みとUSP(独自の売り)を明文化
  • 使用シーンやブランド世界観のトーンを共有
  • 「どう見られたいか」をビジュアルと文脈で整理

モデルと商品のイメージがズレてしまうと、広告の印象がチグハグになり、結果として消費者の信頼を損なうリスクもあります。

たとえば、オーガニックな果実ジュースを訴求したいときには、健康志向でナチュラルな雰囲気を持つモデルが効果的です。

逆に、刺激的なエナジードリンクであれば、アクティブで表情にパワーのあるモデルが適しています。

つまり、「誰に、どんな気持ちで飲んでもらいたいか」を逆算して、モデル像を設計していくことが大切です。

モデルの表情・ポージング・演技力

食品広告においてモデルに求められるのは、“自然に美味しそうに見せる”技術です。

これは単なる笑顔ではなく、見る人の「食べたい」「飲みたい」を引き出す繊細な表情とリアクションの演技が求められます。

ここで、モデルの表現力を引き出すためのポイントをいくつかご紹介します。

モデル演出で意識すべき3要素:

  1. おいしそうな“間”を演出
     口に入れる前の期待感、咀嚼中の満足感、飲み込んだ後の余韻──その一連の“時間の流れ”を意識させることで臨場感が生まれます。
  2. 目線・口角・顎の動きに注目
     口角の上げ方ひとつで、「本当においしそう」が伝わるかが決まる場面も。目元・口元・輪郭の“表情筋”を意識するトレーニングが役立ちます。
  3. ポージングは“自然体”を装う技術
     テーブルの前でリラックスしているように見せながらも、カメラ映えする角度や手元の位置は事前に練習しておくことが必要です。

実際の撮影現場では、モデルが数秒の「飲む・食べる」動作を何十回も繰り返すことも珍しくありません。そこに耐えうる集中力と身体のコントロール力が求められます。

優れたモデルは、食材や飲料の持つ質感や温度さえも“体で伝える”ように表現できるもの。

そうしたスキルが、商品と見る人の距離を一気に縮めてくれるのです。

シズル感とは?──定義と基本エッセンス

広告の現場で頻繁に使われる「シズル感」という言葉。
あなたも一度は耳にしたことがあるかもしれません。

簡単に言えば、“おいしそう!”を視覚で感じさせる力のことです。

もともとは、英語の「sizzle(ジュージューと音を立てて焼ける)」という擬音語から来ており、見た瞬間に「食べたい」と思わせる“感覚喚起型の演出”を指します。

では、シズル感を構成する具体的な要素とは何なのでしょうか?

以下の3つの要素が、シズル感の基本構成です。

シズル感を構成する3要素

1. 視覚的テクスチャ(質感・光沢・動き)
 光の当て方や被写体の表面質感によって、「焼きたてのジューシーさ」や「冷えた清涼感」を視覚で表現します。

2. モデルのリアクション(表情・動作)
 食べる瞬間の表情や飲むときのリアクションで、味覚や満足感を疑似体験させることができます。

3. ライティングと演出効果(湯気・水滴・ミスト)
 照明や空間演出を活用して、五感のうちの視覚を通じて温度や香りを“錯覚的に”感じさせるのがポイントです。

【参考:シズル感を演出する典型的な表現例】

要素表現例視覚印象
湯気ラーメンやスープの立ち上る湯気「アツアツ」「できたて感」
水滴グラスやボトルに付いた細かい結露「冷たい」「さっぱり」
照り・光沢肉やソースの反射、チョコのツヤ感「ジューシー」「濃厚」
スロー動作飲む/かじる動きの緩やかな撮影「味わってる」「とろけそう」

人間は視覚から情報の約87%を得ていると言われています。
つまり、食の魅力も“目から入る”のです。

モデルを活用すれば、これらの演出に“人間らしさ”というリアリティを加えることができ、より没入感の高い広告表現が可能になります。

シズル感は、もはや「料理の見せ方」だけの話ではなく、広告における最前線のクリエイティブ手法といえるでしょう。

シズル感を引き立てる撮影テクニック

シズル感の演出において最も重要なのは、「撮り方」です。
食材の魅力を最大限に引き出すには、光・小道具・動作など、細部にまでこだわった撮影設計が必要です。

ここでは、広告撮影の現場で実際に使われているプロの技術をご紹介します。

ライティングで質感を際立たせる

食品や飲料は、光の当て方次第で見た目の印象が大きく変わります。
特に「テリ」「ツヤ」「立体感」は、シズル感を生む3大要素。

以下は、代表的なライティングテクニックです。

✔ 基本の光の使い方

  • トップライト(上から):全体を明るく見せる。均等な露出に最適。
  • サイドライト(横から):影を強調し、立体感を演出。
  • 半逆光(斜め後方):湯気やミスト、テリ感を引き出すのに最適。

✔ 小道具で補助する

  • レフ板(白板):影を和らげ、ディテールを明るく見せる。
  • ディフューザー(透過幕):光をやわらかく拡散し、優しい印象に。

特に「冷えた炭酸飲料」では、逆光と結露を活かしながら、ボトルの中の気泡まで見せるセッティングが効果的です。

フードスタイリング&小道具の工夫

食材の鮮度や温度感を伝えるには、本物以上に“おいしそうに見せる工夫”が必要です。

プロの現場で使われているスタイリング技術の一例をご紹介します。

シズル演出の裏技集:

  • ミストスプレーで水滴を付ける(飲料・野菜)
  • フェイク氷を使って曇りや融けを防ぐ(ドリンク)
  • ハケで油を塗ることで、照りを強調(焼き物・肉類)
  • グリル跡をアイロンで焼き付ける(ホットサンドなど)
表現したい効果使用アイテム備考
湿り気・冷感スプレーボトル、結露剤カメラ直前に吹き付ける
焼きたて感ドライアイス、湯気発生器動画やスロー撮影で効果的
ツヤ・濃厚さ油、グリセリン混合液長時間の照明でも維持可能

これらの裏技は、広告撮影の現場で日常的に使われており、「いかに見た目を設計するか」が広告表現の質を左右します。

モデルとシズルのシンクロ演出

モデルが登場する食品広告では、食材だけでなく“人の動き”とのシンクロが重要です。

たとえば、以下のような表現が効果的です。

  • 飲む瞬間の目を閉じる演技で「うっとり感」を伝える
  • かじる直前の“ため”を強調して期待感を生む
  • 一口後のリアクションで満足感や幸福感を表現

また、こうした演技を美しく映すために、シャッタースピードの調整や動画撮影時のフレーミングが必要になります。

モデル演出におけるテクニカル設定例:

  • シャッタースピード:1/60〜1/100秒で自然な動きと表情を残す
  • 絞り値(F値):F8〜F11で被写界深度を深くし、顔と食材の両方にピントを合わせる
  • 三脚・スライダー活用で動きに安定感を持たせる

こうした演出が整うことで、視聴者は“味のある瞬間”を共に体験したような気持ちになります。

それがまさに、モデル×シズルが生み出す最大の価値なのです。

撮影現場のコーディネーション術

どれだけ素晴らしいモデルや演出技術が揃っていても、現場での連携が取れていなければ、理想のシズルカットは生まれません。

食品・飲料の広告撮影は時間との戦い
温度変化による食材の変化、モデルの表情のタイミング、ライティングの微調整など、多くの要素が瞬間的にかみ合う必要があります。

そこで重要になるのが、チーム間のコーディネーションです。

モデル・カメラマン・フードスタイリストの連携

撮影現場では、以下のようなメンバーが関わることが一般的です。

担当者役割内容
モデル表情・ポーズ・演技で商品の魅力を引き出す
カメラマン光と構図をコントロールし、絵づくりを担う
フードスタイリスト食品の見た目・配置・道具選びで演出の核を担う
アートディレクター全体のビジュアル方針やトーンを統括
撮影ディレクター撮影進行の管理、演出意図の調整を担当

各パートが互いに“孤立”しないために必要なのが、事前の情報共有と打ち合わせです。

【事前準備で共有すべき資料】

  • 絵コンテ(撮影カット構成)
  • モデルプロフィールと演出指示
  • 商品スペックと温度・鮮度に関する注意点
  • 撮影場所・照明機材の配置図

実際の現場では「モデルの右手が湯気にかかる」「氷が曇ってしまった」「フォーカスが食材に合わない」など、小さなトラブルが連鎖的に発生することもあります。

それを防ぐには、チームの呼吸感と想定力が鍵を握るのです。

撮影当日のチェックリスト

当日の現場がスムーズに進むかどうかは、どれだけ綿密な準備ができているかにかかっています。

特に食品撮影は「時間との勝負」になるため、タイムマネジメントと温度管理が重要なポイントです。

以下は、撮影当日にチェックしておくべき主要事項です。

✔ 撮影当日の実務チェックリスト:

  1. タイムスケジュールの明確化
     モデル到着時間、フード調理のタイミング、撮影開始・終了予定を共有
  2. 温度・質感の管理
     撮影直前に調理/スプレー/湯気発生などの段取りを決定しておく
  3. リハーサルの実施
     モデルの動作確認、照明チェック、ピント合わせを本番前に実施
  4. 表情と動作の再確認
     演出担当からモデルへ、どんな感情を込めるかを丁寧に伝える
  5. データの即時バックアップ体制
     失敗の許されないカットは、その場で確認・保存を徹底

特に「一発勝負」のカットでは、事前の段取りとスタッフの連携が100%の完成度を左右します。

シズルと人のリアクションが“奇跡の一瞬”で重なる瞬間。
そのチャンスを逃さないために、現場では技術だけでなくチームワークの精度が求められるのです。

成功事例・失敗事例から学ぶ

理想的な広告を作るには、他社の成功事例や失敗例から学ぶのが最も効率的です。
特に食品・飲料広告においては、モデルの起用方法やシズル演出の巧拙が、結果に大きく影響します。

ここでは、実際の国内事例をもとに、広告クリエイティブの要点を振り返ります。

国内食品ブランドの成功ケーススタディ

ある国産飲料メーカーが、TikTokインフルエンサー兼モデルを起用した動画広告キャンペーンを展開しました。

内容は、若年層ターゲットの炭酸飲料を、仲間との“楽しいひととき”を切り取った演出で紹介するというもの

その結果、

  • TikTok動画:再生回数1.2億回
  • SNSフォロワー:3週間で+8.5万人
  • 該当商品の売上:前年同週比+35%

成功要因は以下の通りです

  • ターゲットとの共鳴:モデル自身が飲料の愛用者で、投稿内容も自然
  • シズル演出の工夫:飲む直前の笑顔・炭酸のはじける音・グラスの結露が見事に連動
  • 拡散力の最大化:本人のアカウントからも投稿し、UGCを誘発

モデルの存在が“商品のリアルな使用シーン”を体現し、広告としてだけでなく、SNS投稿としても高いエンゲージメントを生んだ好例です。

よくある失敗パターンと回避策

一方で、モデル起用が効果を発揮できなかった事例もあります。
以下に、特によく見られる失敗パターンとその対策を整理します。

失敗パターンと改善策:

失敗内容問題点改善ポイント
モデルと商品コンセプトの不一致健康志向飲料に派手すぎるファッションモデルを起用ターゲット分析とブランドトーンの統一
シズル感の演出不足食材が乾いていた、飲料の曇りが強すぎたなど撮影前の演出リハーサルを徹底
肖像権・使用範囲の契約ミス二次利用不可でWeb展開できずROI悪化法務面のチェックと明確な契約範囲設定
表情演出が不自然モデルがぎこちない演技でリアリティを欠いた演技力重視のキャスティング+事前指導

「モデルを使ったから成果が出る」という単純な話ではなく、使い方の戦略性こそが結果を左右します。

成功事例と失敗例の両方を研究することで、広告の精度と再現性は確実に向上します。

企業担当者向け:モデル起用&撮影導入ステップ

モデルを活用した広告を企画したいけれど、「どこから手をつけていいのかわからない」という企業担当者の声は少なくありません。

ここでは、モデル起用と撮影をスムーズに導入するためのステップを、費用・契約・制作プロセスの観点から整理してご紹介します。

企画・予算設計とROI試算

まずは、広告の目的とKPI(達成指標)を明確にすることが第一歩です。
そのうえで、制作費と期待される効果を照らし合わせながら、費用対効果(ROI)を試算していきます。

予算設計の考え方

費用項目目安金額(スチル広告の場合)
モデル出演料5万〜50万円/人・日
撮影費(スタジオ・機材)10万〜30万円
スタイリスト・ヘアメイク3万〜10万円
フードスタイリスト3万〜8万円
制作ディレクション費10万〜20万円

例:1日撮影+SNS展開用素材を制作する場合、総額で30〜100万円程度が目安です。

ROI試算のポイント:

  • 商品単価・販売目標と連動させて試算
  • Web・SNSへの展開範囲を考慮し、二次利用効果を評価
  • ブランド認知向上など、短期ではなく中長期の効果も見積もる

単なるコストではなく、「どれだけ広く、深くブランド価値を伝えられるか」という視点でモデル活用を捉えることが重要です。

契約・権利関係で押さえるべきポイント

モデルを起用する際に最も注意が必要なのが、契約と使用範囲の取り決めです。
トラブルを未然に防ぐためにも、以下のポイントは必ず契約書に盛り込みましょう。

モデル契約で明記すべき主要項目

  1. 使用媒体と期間
     (例:Web・SNS・チラシ/半年間など)
  2. 二次使用の有無と追加料金
     (例:パッケージ利用・店頭POPなど)
  3. SNS投稿契約
     投稿ガイドラインの提示と、投稿本数・文言の取り決め
  4. 肖像権・パブリシティ権の明示
     想定外の流用を防ぐため、厳密な範囲設定が必要
  5. 撮影データの権利関係
     撮影素材の使用権を企業が得るのか、制作者側が保有するのかの明確化

SNS展開を行う場合は、ブランドイメージと合致しない表現の防止のため、ガイドラインや監修ルールの設定が重要になります。

法務の専門家のチェックを挟むことで、安心してプロジェクトを進めることができます。

モデル志望者向け:食品広告で選ばれるモデルになるには

食品や飲料の広告モデルと聞くと、「特別な表情ができないと無理なのでは?」と不安に感じる方もいるかもしれません。

しかし、実際には“ナチュラルに美味しそうに見せられること”が最も大切です。

ここでは、食品広告に特化してモデルとして選ばれるために必要なスキルや準備方法をご紹介します。

ポージング&表情トレーニング法

食品広告におけるモデルは、ファッションモデルとは異なる“表現力”が求められます。

ポイントは、「一口の瞬間に、味覚の喜びを伝えること」です。

そのための具体的なトレーニング方法をご紹介します。

“おいしそう”を演出する顔筋トレ

  • 目元の表情筋を柔らかくする:アイラインを引くように、鏡の前で目の開き具合を調整
  • 口角を自然に上げる練習:片側ずつの口角上げを10秒キープ×3セット
  • 咀嚼時の表情を録画して確認:自分の“食べている顔”を客観的に見てみる

ミラーワークのすすめ

  • 毎日、鏡の前で「食べる動作」や「飲む動作」を再現
  • 表情の変化を細かくチェックし、自分の“得意な角度”を見つける
  • 手元・肩の動きと顔のバランスも同時に確認

自然体に見える演技こそ、高度なスキル。
練習すればするほど「食べているだけで絵になる」表情が磨かれていきます。

ポートフォリオとオーディション対策

食品広告に出演するためには、単に表情だけでなく、見せたい印象に合ったポートフォリオと実績の提示が重要です。

ポートフォリオ写真の要件

必須カットポイント
自然な笑顔のアップ歯を見せすぎず、やわらかな表情がベスト
食べる/飲む演出実際にスプーンやカップを使って“動き”を見せる
正面・斜め・横顔顔の立体感と角度による印象の違いを確認できる

オーディションで見られるポイント

  • カメラの前でのリアクションの素直さ
  • 演出指示に対する反応速度と柔軟性
  • “食べながらしゃべれるか”など実用性の確認
  • 撮影時に緊張せずリラックスした笑顔ができるか

SNS動画でも“ナチュラルに見える”人が選ばれる時代。
完璧よりも、「自然体で共感を呼べる人」が重宝されます。

食品広告に向いているモデルは、演技力よりも生活感や人間味を伝えられるかどうかがカギです。

自分らしい魅力を活かして、広告の中に“リアルな人”として登場できるモデルを目指しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q: モデルを起用した場合の平均的な費用相場はどのくらい?

A: 起用するモデルのランクや、媒体(Web、SNS、TVCMなど)、使用期間によって大きく異なります。
一般的なスチル広告であれば、5万円〜50万円/日が相場です。
動画併用の場合は、20万円〜100万円超となることもあります。
SNSタイアップでは、フォロワー数に応じて1投稿5千円〜数万円が基準です。

Q: 食品広告でシズル感を高めるための簡単なライティング方法は?

A: 基本的には、斜め45度からのトップライトを硬めの照明で当て、逆サイドから白レフ板で起こす方法が効果的です。
この手法で、食品のテリ・ツヤ・立体感が際立ち、より“おいしそう”な印象を与えることができます。

Q: モデルと食材の両方にピントを合わせるコツは?

A: 絞り値(F値)をF8〜F11程度に設定し、三脚で固定撮影することで被写界深度を深く取れます。
動きがある場合は、スローシンクロや連写機能を活用すると効果的です。

Q: インフルエンサーをモデルとして起用する場合の注意点は?

A: SNS上の使用範囲を明確に契約で定義することが最重要です。
また、ブランドセーフティの観点から、投稿内容や表現に関する投稿ガイドラインも設定しておくと安心です。

Q: モデル未経験でも食品広告に採用される可能性はある?

A: 十分にあります。
特に自然な笑顔や“おいしそうな表情”ができる人は、未経験でも起用されやすい傾向にあります。
実践的なポートフォリオと、自分の魅力を正しく伝える応募資料がカギとなります。

まとめ

食品・飲料広告は、単なる「商品紹介」ではありません。
そこにモデルを起用することで、商品の味わいや世界観、ブランドストーリーを“体験として伝える”力が格段に高まります。

さらに、シズル感を引き出す撮影テクニックや、チーム連携による現場の完成度が加わることで、視覚インパクトと購買率の両立が可能になります。

モデル起用を検討している企業の方へ

  • 商品の特性やターゲットに合ったモデル選定
  • 演出力と拡散力を持つ人材の活用
  • 契約・制作・運用までをトータルで設計すること

これらを意識することで、ブランドにとって意味あるクリエイティブ投資が実現できます。

モデルを目指す方へ

  • 食品広告には“ナチュラルな人間味”が求められる
  • 表情・動作・ミラーワークを重ねて表現力を磨く
  • 自分らしさを伝えるポートフォリオ作りが成功の鍵

モデルとシズル感が融合したとき、広告は単なる販促ツールを超え、記憶に残る体験型コンテンツになります。

この記事をきっかけに、企業もモデル志望者も、食品広告の可能性をより深く知り、戦略的に活用していただければ幸いです。

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「MODEL Bookmark」は現役モデル『藤原 宏旨』が監修するモデルのための総合情報サイトです。

◆監修|藤原 宏旨 - Hiroshi Fujiwara -

<経歴|Career>
モデルとして10年以上の実績を積み上げ、現役モデルとして活躍しながら現在はWeb事業を手掛ける株式会社リンクカラーの代表として活動。

<Achievement|モデル実績>
・CM|GEORGIA/NTTドコモ/シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート etc...
・MAGAZINE|smart/カジカジ/ゼクシィ etc...
・STILL|USJ/Nikon/ベルメゾン/ニッセン etc...
・SHOW|ZARA/高島屋/岡山天満屋 etc...
・OTHER|Panasonic/ミスタードーナツ/日立 etc...

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