2025年2月10日、世界的スーパーモデルのナオミ・キャンベル氏がタイ政府の「スーパーモデル育成プロジェクト」にアドバイザーとして関わることになったとのニュースが報じられ、ファッション業界で大きな注目を集めています。
同日午後、キャンベル氏はバンコクの政府庁舎でペートーンターン・シナワット首相と会談し、タイ発のモデル人材を世界に送り出しファッション産業を強化する戦略について話し合いました。
これはタイ政府が掲げる「ソフトパワー」戦略の一環であり、タイのファッション界を国際的にアピールする取り組みの中心にキャンベル氏が招かれた形です。
Contents
ナオミ・キャンベル氏がタイで果たす役割

タクシン氏が主導するプロジェクトの背景
今回の起用は、元首相のタクシン・シナワット氏が主導したプロジェクトによるものです。
タクシン氏は以前から「タイの若い女性やあらゆるジェンダーの人々に世界のランウェイで活躍してほしい」という構想を語っており、キャンベル氏を自らの人脈を活かして顧問(コンサルタント)に招いたと明かしています。
実際、キャンベル氏は2月8日にタクシン氏の招きでタイに到着し、首相との会談に先立ち政府関係者と打ち合わせを行いました。
地方出身者へのチャンスとモデル発掘
この席にはスラポーン・スープウォンリー国家ソフトパワー開発委員長やジラポーン・シントゥプライ首相府付大臣、ティーララット・サムレットワニット内務副大臣らが同席し、地方出身の恵まれない若者にもチャンスを与えるためのモデル発掘・育成について意見交換がなされたといいます。
キャンベル氏自身、地方のモデル志望者を発掘して育成し、選抜者を海外に送り出すというアイデアを提案しました。
具体的には、タイ国内の村落から全国レベルでモデル候補者をスカウトし、国内で訓練を積んだ上で海外での経験を積ませる計画です。
美容整形支援と論争
必要に応じて美容整形の支援を含め、若者たちがファッション界で成功するためのあらゆる機会を提供することも検討されています。
タクシン氏はこのプロジェクトに対し、自らとスポンサー企業から約2,000万バーツ(約9億円)の予算を投じる意向を示しており、「生まれつき美しいタイ人を選抜する(整形美人ではなく)」といった大胆な発言も行いました。
この発言は一部で物議を醸し「アフリカのモデル」に言及した点が人種差別的と批判されましたが、娘であるペートーンターン首相は「差別的な意図はない」と擁護しています。
こうした inclusive(包括的)な視点のもと、キャンベル氏はタイのモデル育成キャンペーンの顔として、世界的視野でのアドバイスと指導を提供していく予定です。
ペートーンターン首相はメディアに対し「キャンベルさんは顧問ではなく、国としての提携相手だ」と説明しており、公式な肩書にとらわれないパートナーシップの形で協力関係を築いていく姿勢が示されています。
ナオミ・キャンベル氏の経歴と社会貢献
トップモデルとしての輝かしい歩み
ナオミ・キャンベル氏は約40年にわたりトップモデルとして君臨してきた伝説的存在です。
1990年代「ビッグ5」と称されたスーパーモデルの一人であり、フランス版『ヴォーグ』誌や米『タイム』誌など複数の名だたる雑誌で、黒人モデルとして初めて表紙を飾るという快挙を成し遂げました。
そのカリスマ的なウォーキングと存在感でファッションショーを席巻し、モデル業界の多様性を切り拓いた「アイコン・オブ・ダイバーシティ(多様性の象徴)」として知られています。
メディア活動と社会貢献の実績
近年はモデル業以外にも女優やプロデューサーとして活躍の場を広げ、米国のオーディション番組『The Face』ではエグゼクティブプロデューサー兼コーチを務めました。
また社会貢献にも熱心で、2005年に自身が創設したチャリティー団体「ファッション・フォー・リリーフ(Fashion for Relief)」を通じて災害支援や貧困問題に取り組んできました。
こうした活動により2022年には英国の創造芸術大学から名誉博士号を授与されています。
次世代への支援とタイとの協働
キャンベル氏は一貫して自身の影響力を前向きな変革に活かす姿勢を示しており、人種的多様性の推進や新興デザイナー・モデルの支援など、ファッション業界の次世代育成にも積極的です。
今回タイ政府のプロジェクトに参画することも、彼女のこうした信念と実績が評価されてのことでしょう。本人も、
「ファッションのソフトパワーを活用して経済効果や文化交流、国際的な友好関係を生み出すことは私のキャリアの大事なテーマであり、それをタイと共有できることに興奮している」
と語っており、タイとの協働に強い意欲を見せています。
またインスタグラム上では、
「タイの唯一無二の魅力と才能を世界最高峰のランウェイで披露するため、有意義な議論を重ねました。自分の経験を生かし、タイのクリエイティビティを世界へ届けるための道を切り拓くお手伝いができることにワクワクしています」
https://today.line.me/th/v2/article/kE6lwYLL
とコメントし、具体的な支援への抱負も表明しています。
実際、訪タイ中にはバンコク市内のデパート(セントラル・チッドロム)を訪れ、展示されていたタイ各地の織物やスキンケア製品などローカルブランドの商品を熱心に視察したとのことです。
タイのファッション業界とソフトパワー戦略
タイ政府の戦略と取り組み
今回のキャンベル氏招聘は、タイ政府が掲げるソフトパワー戦略の中でもファッション産業に焦点を当てた施策です。
タイは料理や映像コンテンツなどソフトパワー資源の豊かな国ですが、ファッション分野でも世界的な地位確立を目指しています。
実際、政府はタイを「アジアのファッションハブ」とする構想を打ち出し、国内デザイナーの育成やブランドの国際展開支援に力を入れ始めました。
国家ソフトパワー開発委員会の下にはファッション部門のサブコミッティー(小委員会)が設置されており、その委員長であるアチャラ・ウンプージュ氏は「タイのファッション製品は潜在力が大きいが、認知度を高める必要がある」と指摘しています。
例えばタイの宝飾職人の技術は世界でも高く評価されていますが、自国ブランドの確立よりも欧米ブランドの下請け生産(OEM)拠点として知られてきた面があるのです。
そこで政府主導で「Soft Power Fashion Thai」と題したプロジェクトを立ち上げ、優れた地元ファッション企業やデザイナーを選抜して商品力を磨き、国内外の消費者にアピールする取り組みも進められています。
国内で大規模なファッションイベント「Show Pow(ショー・パウ)」を開催し、新進デザイナーの斬新なコレクションを披露するなど、国内外のメディアやバイヤーの関心を引く工夫も凝らされています。
国際的インフルエンサーとしてのキャンベル氏の起用
こうした文脈で、ナオミ・キャンベル氏という世界的影響力を持つ人物の協力は、まさに「国際的インフルエンサー」を起用した戦略と言えます。
ウンプージュ委員長も「海外のインフルエンサーを活用してタイ製品をプロモーションすることが有効な戦略だ」と述べており、キャンベル氏の起用はこの方針と合致します。
彼女のネットワークや知名度を通じ、タイ人モデルの国際デビューのみならず、タイ発ファッションブランドや繊維製品の認知拡大にも波及効果が期待できます。
近年、タイの映画や音楽(特に「ボーイズラブ(BL)」ドラマなど)は世界的な人気を博しつつあり、それに続いてファッション面でも「タイ発」のトレンドを起こそうという機運が高まっているのです。
今回のプロジェクトは、そうした総合的なソフトパワー強化の一環として位置付けられています。
関係者のコメントと今後の展望
メディアと関係者からのコメント
キャンベル氏とタイ政府の協働について、国内外のメディアは好意的に報じています。
現地紙Bangkok Postは「キャンベル氏が月曜に首相と会談し、タイを世界的なスーパーモデル輩出国かつファッションの中心地に変える方策を協議した」と伝えました。
また、今回の仕掛け人であるタクシン元首相は「彼女の業界での豊富な経験と広い人脈に期待してアドバイザーに招いた」と述べており、キャンベル氏への信頼の大きさを強調しています。
ペートーンターン首相自身も会談後の記者会見で「タイには生地生産など優れた人材が多く、ソフトパワーの強みがある」と国内資源への自信を語りつつ、「今後キャンベル氏との正式な顧問契約については、必要であれば改めて検討する」と慎重な姿勢を見せました。
(※顧問ではなく対等な「提携」という表現を用いた背景には、国外の専門家と柔軟に連携していきたい意図があるようです)
今後の展望と期待
一方、タイの若手モデルやデザイナーたちからは期待の声が上がっています。
現地ファッション関係者の中には、
「ナオミの指導は貴重な経験になる。タイから次のナオミ・キャンベルを輩出できるかもしれない」
とコメントする人もおり、プロジェクトの具体化に関心が高まっています(MODEL Bookmark編集部調べ)。
今後はキャンベル氏の指導のもと、全国規模のモデルオーディションやトレーニングキャンプが開催される可能性があります。
公式にはまだ詳細日程は発表されていませんが、報道によればコンテストの開催や選抜者の海外派遣などが検討段階にあるとのことです。
実現すれば、タイ版「次世代トップモデル」誕生への道が開かれるかもしれません。
まとめ
ナオミ・キャンベル氏のタイ政府プロジェクト参画は、ファッションを通じた国づくりというユニークな試みとして注目に値します。
世界のトップで活躍してきた彼女が持つ知見とネットワークは、タイの若い才能にとって大きな追い風となるでしょう。
タイ政府にとっても、キャンベル氏の協力は同国のソフトパワー発信力を飛躍的に高めるチャンスです。
もちろん、世界的モデルを輩出するには人材発掘・育成システムの構築や国際マーケティング戦略など課題も多く、単に有名人を招くだけで成果が出るわけではありません。
しかしキャンベル氏という“生きた伝説”が携わることで、タイのファッション界全体に刺激が生まれ、新たな投資や若者の志向を喚起する効果も期待できます。
事実、キャンベル氏は今回の訪問を「素晴らしいビジョンの共有」と評価し、引き続きタイと協力していく意思を示しています。
今後、具体的なプログラムが始動しタイ初のスーパーモデルが誕生する日が来れば、ファッションの歴史においてもエポックメイキングな出来事となるでしょう。
タイのランウェイから世界へ羽ばたくスターの出現に、業界関係者のみならず多くの人々が期待を寄せています。
キャンベル氏とタイのコラボレーションがどのような成果を生むのか、これからの展開に目が離せません。
その後タクシン氏は、カレン族などタイ国内の多様な民族グループの持つ自然な美しさにも触れ、あらゆる出自の才能を包含する方針であることを強調しました。